渡辺 康広(わたなべ やすひろ)福島県酒造協同組合理事・酒米対策委員会委員長 有限会社渡辺酒造本店 代表取締役社長 にインタビュー
日 時:平成26年10月22日(水)、午前10時~11時
場 所:有限会社渡辺酒造本店
訪問者:横田洋子、大橋佳代
1.酒米対策委員会はどのようなことをされていますか?
福島県には蔵元がおよそ60ありますが、その蔵元に対して酒米全般を供給しています。米の量、価格、品種の区別をするということを一手に引き受けています。
2. 震災後についてのお話をお聞かせください。
私の蔵も大きな被害を受けましたが、その復旧に当たって間もなく原発事故が起きてしまいました。すぐに「福島の酒を、米を守らなければならない」と思いました。
3月15日には独自に放射能検査を始め、翌16日と17日には酒造組合で放射能測定を決めました。そして4月5日には会見をし、風評被害対策に取り掛かりました。
私は大学で放射線化学の勉強をしよく理解していたため、なおさらきちんと検査をして安全を確認するよう啓蒙しました。
福島県酒造組合は検出下限値10Bq/kg以下での厳しい自主基準のもとで福島県の酒、他約2万点を検査し、2013年5月には製品検出報告はゼロ「検出 せず」を確認し、検査指針を提案して取り組んできました。現在も、この自主基準において放射性物質を検出したものはありません。
福島の酒は酒造組合が先駆けになり、風評被害を払拭するためこのような取り組みをすることで、米や酒の放射性物質を検知する手段とルートを確立、これを受けて放射能検出測定機約300台の導入の一助になりました。
放射能についていろいろな方に相談を受けます。きちんと検査すれば良いことを伝えています。
3.原発事故後の農家さんへの取り組みについて教えてください。
原発事故を受けて農家さんも落ち込んでいました。しかし酒造組合での取り組みをお話することで、米について対応していこうと考えてくれるようになりました。
土壌を手当てすることによって放射性物質を吸わせない米作り、カリウム肥料を使用した有効性について、とにかく農家さんに指導・講演をしてまわりました。 3年間20回以上の講演で約2,000人の方へお話してきました。わかりやすい説明で一人でも多くの人に理解できるよう努め、行動を呼びかけました。
福島県は全農家にカリウム肥料を支給、皆さんに実行してもらいほとんどの農家の米が検査に合格し現在に至っています。
4. 現在は?
日夜、風評被害払拭・福島県産品拡大のために考え、活動しています。
他県の応援してくれる人に、間違った情報を流さないよう丁寧に説明し、情報発信してもらっています。
安心という言葉を安易に使わず、安全は私たちが担保させていただきますと伝えています。
5. 今後どうなっていってほしいですか?
福島の酒を「うまい!」と言って下さる方がたくさんいらっしゃいます。このことは県民の皆さんに“自慢”に思ってほしいのです。
10年後には、福島県のお酒のイメージ、飲んで下さる量が震災前と同じ状態に100%戻ってほしいです。そのために、原発事故の影響を覆し、一人でも多く の方に福島の日本一の酒を飲んでもらえるように頑張っていきたい。安全性を確保し、伝えていくことで風評の払拭をはかっていきます。
これからは『品質の良さでのおもてなし』『作り手は安全を売る、売り手は安心を売る』がテーマです。